2019年1月17日木曜日

山下澄人さんの「小鳥、来る」に感動


 年末年始、中央公論新社の「小さな文芸誌」『アンデル』9月号~12月号に連載された、山下澄人さんの「小鳥、来る」を読んでいました。

山下さんの作品を読むといつもそうなのですが、一行一行が心の隅々に沁みて、ひりひりするような感覚を覚えながら、何度も繰り返し読みました。

「この時○○は、××箇月前、△△だった時のことを思い出した」といった、読者に、理解の手助けをするための解説抜きで、時間と場所がぱっぱっと切り替わるのがとても新鮮で刺激的。

子供たちの会話も、いきなりしりとりが始まったり、突然脈絡が逸れたり、情報を伝えるためにではなく、それ自体が、生の証としてあるような言葉の輝きに、心を打たれました。
 同時並行していく、たたみかけるような会話がとても演劇的で、舞台を観ているような錯覚も覚えました。

ちょっと外れたところで生きている人たちの存在感にも心打たれました。
人間が一人も住んでいない山の中で、誰にも見られることのないまま、澄んだ輝きを放ちながら溶けていく氷柱の光を見るかのようでした。

『アンデル』が12月号で刊行・配信終了になってしまったので、「小鳥、来る」も未完。

 続きを読める日が、とても楽しみです。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿