2019年3月10日日曜日

阿部嘉昭さんの詩集『日に数分だけ』(響文社)の書評を、現代詩手帖3月号「Book」欄に書きました。

阿部嘉昭さんの詩集『日に数分だけ』(響文社)の書評を、現代詩手帖3月号「Book」欄に書きました。
声に出して読むと、音の美しさが染み入るような詩集で、この詩集の持つ独自の音楽性についても言及したかったのですが、紙幅の関係で触れることができなかったので、ここに少し書いておきます。
一つの詩について、一行の長さが、ほぼ同じでありながら微意妙な差異があり、それが、かすかに揺らぐような感覚を生んでいます。
引用した、「日に数分だけ」の場合、最初の四行が、18字、16字、18字、19字。
残された余白もまた、揺らぐかのように見えます。...
一行を読むのに要する時間が大体同じなので、一行が一小節に対応する音楽のようにも感じられてきます。
各行末の空白は、休符のようでもあります。
平仮名の多用も印象的で、言葉の持つ音楽性、視覚性といった、感覚的な面が前面に出てきて、意味指向性が背後に退いていく。
読者が、意味を伝えたら消えてしまう言葉ではなく、音と形を持った言葉の体自身と触れることを可能にしている詩集だと思います。美しいです。


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