2017年12月13日水曜日

平田俊子さんの「低反発枕草子」(幻戯書房)

読んで印象に残った本を、FBで随時アップしていく予定でいたのだけど、今年は、冬は次から次へと心配事、春からは垣根の病気に追われ、アップできないままになってしまった。今もまだ垣根に時間がとられていて、一言ずつになってしまうけれど、本を通して今年の読書を振り返ってみたい。
 1月15日発行、平田俊子さんのエッセイ集「低反発枕草子」を読んだ時は次から次へと心配事が起きている真っ最中。その中で、この本にとても癒やされた。
 特に面白かったのが、日常の、本当に些細な出来事を書いた作品。レトルトカレーの注意書きの読み比べや、「アイツ」(ごきぶり)との格闘など、通常は文字にされないまま忘れ去られてしまうような小さな出来事が鮮やかに描かれている。中でも、底が濡れて染みが付いた宅配の段ボール、山手線のホームに落ちていた薄汚れたボールペンから始まる二篇には心を揺さぶられた。
 清少納言の枕草子も、「春はあけぼの」など、高校生の時に覚えさせられた美意識もさることながら、迷い込んでいた犬がいなくなってまた現れた、とか、花瓶の置き場所を変える、とか、極めて日常的なことを活写して、過去の瞬間が鮮やかに蘇る作品に私は特に心惹かれている。
 タイトルだけではなくて、書くという営みの中に、枕草子から脈々と引き継がれてきた随想のエッセンスを感じる本。
ちなみに、この本の中に、私が実名で登場しています、、、読んだ時は私もびっくり。
 

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